ペインクリニックとは
幅広い痛みを対象とした診療で、痛みの緩和や改善を目指すことで、日常生活をより快適にするための診療です。
痛みによって支障をきたしている仕事、趣味、食事、睡眠などの日常生活を改善し笑顔、元気を取り戻すことを目標にしております。
腰痛、肩こり、頭痛など日常的に経験する痛みでお悩みの方はもちろん、一般的な治療を受けても痛みが改善しない方などを対象に、痛みなどの不快な感覚の原因を確認しながら治療を行います。
何となく自覚する体の不調には、程度の差はありますが痛みといった不快な感覚が伴うこともあるため、その症状の改善を目指すペインクリニック診療がお役に立つ場合があります。
過去の経験から、さまざまな内科疾患や生活習慣病、整形外科の視点からも診療し、痛みの裏に潜む別の疾患にも目を向けた包括的なアプローチを行い、痛みだけではなくその原因に対しても診断や治療を行います。
患者さま一人ひとりの症状に応じて、神経ブロック・薬物療法・漢方治療・理学療法など多種多様な治療法を組み合わせて、痛みの緩和と再発予防を目指します。
当クリニックのペインクリニック診療は、原則として保険診療で行っています。
痛みについて
そもそも痛みの定義とは、41年ぶりに改訂されたIASP(国際疼痛学会)で述べられていますが、「実際の組織損傷またはその可能性に関連する、あるいはそれに似た不快な感覚・情動体験」とされています。
また、付記として以下の6項目が追加されています。
※括弧内は当クリニックによる解釈です。
- 痛みは常に個人的な経験であり、生物学的、心理的、社会的要因によってさまざまな程度に影響を受けます(痛みは本当にさまざま)。
- 痛みと侵害受容は異なる現象です。
痛みは感覚ニューロンの活動だけから推測することはできません(現代科学だけでは全てを理解するのは難しい)。 - 人は人生経験を通じて、痛みの概念を学びます(誰でも痛みは経験する)。
- 痛みとしての経験に関する個人の報告は尊重されるべきです(痛みに寄り添う必要がある)。
- 痛みは通常、適応的な役割を果たしますが、機能や社会的および心理的な幸福に悪影響を及ぼす可能性があります(痛みは危険信号を伝えるシグナルですが日常生活を脅かす可能性がある)。
- 言葉による説明は、痛みを表現するいくつかの行動の1つにすぎません。
コミュニケーションができないからといって、人間や人間以外の動物が痛みを経験する可能性が否定されるわけではありません(言葉などで痛みが伝えられない場合でも痛みがある可能性がある)。
なんだか文章にするとややこしい感じもするかもしれませんが、前提として以前は組織や神経の損傷があってはじめて痛みが出るものだと考えられていたものが、必ずしもそうとは限らず、とにかく患者さまと痛みの関係について、より密接に寄り添う必要があることがお分かりいただけるかと思います。
残念ながら痛みの程度や辛さは患者さま本人にしか分かりません。
だからこそ、患者さまの痛みをできる限り全人的に理解し、患者さまと真摯に向き合って診療を行う姿勢が大切だと思います。
対象となる主な症状・疾患
基本的に幅広い痛みを対象としていますので、痛みでお悩みの場合はまずはご相談ください。
痛みの種類は、外傷からくる痛み、病気からくる痛み、急性の痛み、慢性の痛み、心の痛みなど多種多様ですが、さまざまな痛みがペインクリニックの診療対象となります。
また多汗症など、痛みを伴わない症状・疾患についても診療の対象となる場合があります。
原因がはっきりしないといわれたような痛みも真摯に向き合っていきます。
- 全身:帯状疱疹関連痛・帯状疱疹後神経痛、がん性疼痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、線維筋痛症、脳卒中後疼痛、有痛性糖尿病性神経障害、末梢神経障害性疼痛、手術後創部痛など
- 頭や顔面:片頭痛、群発頭痛、筋緊張性頭痛、後頭神経痛、三叉神経痛、側頭動脈炎、顎関節症、ラムゼイハント症候群、ベル麻痺、副鼻腔炎など
- 首や肩:頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア、肩関節周囲炎、肩こり、頚肩腕症候群など
- 胸や背中:肋間神経痛、開胸術後疼痛症候群など
- 腰や下肢:急性および慢性腰椎症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、坐骨神経痛、血行障害性疼痛、手術後腰下肢痛、幻肢痛など
- その他:顔面神経麻痺、顔面けいれん、多汗症、突発性難聴、冷え性、更年期障害、アレルギー性鼻炎、末梢血管障害、自律神経の乱れなど
ペインクリニックの主な治療法
神経ブロック療法
神経ブロック療法は、ペインクリニックで行う治療法の一つです。
痛みは該当する神経を介して中枢神経へと伝わり、不快な感覚として自覚されます。
そのため、伝達シグナルを遮断するために神経や神経周囲に局所麻酔薬などを注入し、痛みの伝達を一時的に遮断します。
通常エコーを用いて神経やその周囲を確認しながらアプローチを行い、急性の痛みや神経由来の痛みに対して、痛みの緩和を図ります。
星状神経節ブロック、後頭神経ブロック、眼窩上・下神経ブロック、オトガイ神経ブロック、下顎神経ブロック、三叉神経ブロック、肩甲上神経ブロック、腕神経叢ブロック、肋間神経ブロック、硬膜外ブロック(頚部、胸部、腰部)、仙骨硬膜外ブロック、仙腸関節ブロック、大腿神経ブロック、坐骨神経ブロック、トリガーポイントブロック、ハイドロリリースなどに対応しています。
薬物療法
痛みの種類や程度に応じて、鎮痛薬、抗炎症薬、神経障害性疼痛に対応した薬や漢方薬などを適切に使い分けて処方します。
運動療法・物理療法(リハビリテーション)
こちらは理学療法に相当します。
日常生活や運動にかかわる筋肉や関節の動きを改善し、痛みの緩和や再発予防、活動度改善を目指します。
赤外線や干渉波などの物理的な刺激を与えて症状の改善を図ることもあります。
自宅でも行えるセルフリハビリテーション指導も行います。
トリガーポイント注射
押すと痛む場所に対して麻酔薬を投与します。
合併症の心配が少なく、整形外科、麻酔科などで広く実施されている保険適用の治療法です。
通常ネオビタカインなどの局所麻酔薬を用います。
稀ではありますが、出血、血腫、感染、神経障害などの合併症を起こすリスクがあります。
トリガーポイント注射自体の料金は3割負担の方で300円ほどです(ほかに診察料や薬剤費などがかかります)。
ハイドロリリース(筋膜リリース)
最近になって登場した治療法です。
筋肉・腱・神経・血管などを包み込んでいる「fascia(ファシア)」(筋膜や結合組織)の滑走不全や癒着に着目した治療の考え方です。
わずか数mmの筋膜や筋肉の間の層に正確に注入する必要があるので、エコーで確認しながら動きの悪くなっている部位に注射で薬液を注入して筋膜の癒着を剥がしていきます。
癒着が解消されることで、痛み物質の洗浄効果も期待され、疼痛の改善につながるとされています。
また、神経の癒着を解消することも効果的といわれており、手足のしびれなどに対してハイドロリリースを行うこともあります。
通常行われているブロック注射などは、神経や受容器に対し局所麻酔薬や鎮痛剤などによって痛みを緩和させることを目的としてきましたが、ハイドロリリースは癒着の解消を目指すものです。
主に生理食塩水を使うのみですので、比較的身体への負担が少ない治療ですが、妊娠中・授乳中の方は、状態を確認したうえで治療を検討します。
1回の施術は部位によりますが、5~10分程度と比較的短時間で済むことが多いです。
注射で癒着が解消され、一時的に痛みが消失しても、生活習慣や身体の使い方が変わらなければ再度癒着がおき、症状が再燃する可能性がありますので、その後のリハビリが重要です。
リハビリをすることによって注射の効果が高まるだけでなく、作用も持続するため、当クリニックではセルフリハビリテーション指導も行っています。
1回の注射で症状が改善する方もいらっしゃいますが、同部位を数回施行してから効果が出てくることもあり、効果には個人差があります。
稀ではありますが、出血、血腫、感染、神経障害などの合併症を起こすリスクがあります。
残念ながらハイドロリリース自体は国が認めた健康保険の適応ではないため、一般的には自費診療(1部位:3,000〜5,000円ほど)となることが多いですが、当クリニックでは保険診療上、局所麻酔薬を併用して1ヶ月に1回、1部位までであれば保険診療で行っています。
その際の費用は3割負担の方で1,000円ほどです(ほかに診察料や薬剤費と検査費用などがかかることがあります)。
星状神経節ブロック
あまり聞きなれないかもしれませんが、自律神経・ホルモン・免疫系機能を調節して、交感神経の過緊張を緩和する方法の一つで、この方法は1950年代から広く行われてきました。
交感神経が関与するさまざまな疾患に用いられていますので、適応疾患は多岐にわたりますが、一般的には頭部、顔面、首や上肢の痛み、自律神経失調症などの治療に対して広く行われます。
それ以外にも、片頭痛、眼精疲労、耳鳴り、肩こり、咽頭喉頭異常感症(別名ヒステリー球:のどがつかえた感じがする症状)、不整脈、不眠症や過眠症などの睡眠障害、過換気症候群、多汗症、起立性調節障害、過敏性腸症候群、便秘、下痢、腹部緊満症、月経異常、月経前緊張症、月経困難症、更年期障害、頻尿、夜尿症などに対して行われることがあります。
当クリニックでは全例エコー画像を用いながら安全性に配慮して行います。
エコーを首の前面部分に当て、目標付近の血管や神経を確認した後に消毒を行い、針を確認しながら目標部位まで進めて局所麻酔を注入します。
通常キシロカインなどの局所麻酔薬を用い、5分程度で終了しますが、その後副作用などがないか確認するため30分程度ベッドで安静にしていただきます。
交感神経をブロックするため、交感神経の働きが抑制されることによるまぶたの下がりや声のかすれ、血管が拡張することで血圧低下やめまい、ふらつきなどの症状が生じる場合もありますが、これらの多くは時間とともに回復します。
稀ではありますが、出血、血腫、感染、神経障害などの合併症を起こすリスクもあります。
局所麻酔自体の効果は数時間ですが、目的である交感神経節の周囲に拡散するように薬液を広げているので徐々に吸収されることにより、個人差もありますがおよそ2~3日以上は効果が持続します。
1回の注射で改善する方もいらっしゃいますが、数回施行してから効果が出てくることもあり、効果には個人差があります。
通常保険適用ができる治療法ですので、星状神経節ブロック自体の料金は3割負担の方で1,000円ほどです(ほかに診察料や薬剤費と検査費用などがかかることがあります)。
スーパーライザー(近赤外線治療)
スーパーライザーとは直線偏光近赤外線治療器のことで、血管拡張や生体活性物質の産生を促進する作用と神経興奮抑制作用があるため、鎮痛消炎と創傷治療などに効果があり、40年ほど前から広く使われてきました。
また、星状神経節に照射することにより星状神経節ブロックに近い作用が期待できます。
1回5~10分程度で終了します。
照射中はほんのり温かく柔らかい光が当たる感覚があり、痛みはほとんどありません。
星状神経節ブロックを試してみたいけれど首に針を刺すのが怖い、血液サラサラの薬を飲んでいて出血しやすい、繰り返し照射を行い徐々に治療効果を得たいなどといった方にも選択肢となる治療法です。
通常、個人差はありますが、注射でのブロックと比較すると1回あたりの即効性は弱く、繰り返し照射することで星状神経節ブロックに近い効果が期待できるとされています。
また、すでに腰痛や下肢痛などでリハビリに通われている方にも、疼痛部位に直接照射し、患部を温める目的でリハビリと併用することがあります。
回数の制限はありませんが、治療効果を得るために1~2週間に一度の照射をおすすめします。
深達性に優れた600~1,000nmの波長帯で、近赤外線を患者さまにお届けしています。
こちらも基本的に保険適用ができる治療法ですので、スーパーライザーによる治療自体の料金は3割負担の方で110円ほどです(ほかに診察料などがかかります)。